キャンプから学んだ社会学

十人十色

冬ですが夏の話しを!
昨年8月の終わりに小学生を3泊4日で瀬戸内海の島へキャンプに連れて行くという企画のお手伝いをしました。仕事の関係から私は2日目の昼からの参加であったのですが、3日間の体験を通じて、大人の役割から社会のあり方までいろいろと考えたこと、発見したことがあったのでそれを書きたいと思います。


キャンプには小学校1年生から6年生まで男女合わせて27名の子供達が参加していたのですが、子供は一人ひとり様々でした。当たり前と言えば当たり前のことなのでしょうが、普段一度にそれほど多くの子供に会うことなどないので実感としてそう思ったのです。活発な子、おとなしい子、はしゃぎまわる子、マイペースな子、大人びた子もいれば、子供だな~と思える子、口達者な子に、物静かな子。真っ黒に日焼けした子もいれば、細く色白な子もいました。全員と喋ったわけではないのですが、27人一人ひとりがそれぞれに特徴があり、まさに十人十色といえる子たちでした。ひとつ共通点を上げるとすれば、(アレルギー等抱えている子も多いですが…、)3泊4日のキャンプに参加する子だけに、基本はみんな元気です!

一方キャンプを支える大人は、4日フル参加の人もいれば、仕事の関係から私のように途中からの参加や、途中までの参加、あるいは1日だけの参加者もあり、こちらも総勢20名が参加しました。大人チームには学生もいれば社会人もいました。学生は高校生と大学生。社会人は普段から子ども相手の仕事をしている人もいれば、写真家、漁業従事者、清掃業の人もいます。中には政治家秘書なんて人も…。また独身(まだまだ独身、再び独身)の人もいれば、子育て真っ最中な人から子供もそろそろ独立かという人までいます。それぞれ状況も考え方も違う人たちが集まっていたわけです。

黙々と自分の役割をこなしながら子供と大人を見ていると、大人の子供への接し方も様々であることが分かりました。子供全員を笑わす人、子供をうまくリードしていく人、子供と一緒になって遊んでいる人。私のように自分の担当を重視しつつ、時々子ども相手をする人と、子供と大人の関わり方はこれまた十人十色であることが分かりました。正直普段だったらきっと会うこともないだろうし、おそらく気も合わないだろうなと思う人もいたりしするのですが、それでも各々がそれぞれの役割を果たしつつ、子供たちのキャンプ体験を支えているのです。

そこで思ったことが、こうして大人みんなが関わりあえているのは、「この子どもキャンプを支えよう」という共通目標があるからこそだということです。子供たちに夏の思い出を作ってもらいたいとか、このキャンプを通じていろいろな体験をしてもらおうという気持ち。それは言い換えれば、この体験を通じて子供たちの成長を願うものです。それが大人みんなの根底にあるので、特に大きな揉めごともなくチームを組めているのです。

技を伝える

更によく見れば、大人たちはそれぞれ自分の得意でもって子供たちを支えているわけです。保育士の人は子供をうまく導きつつ子供たちに様々な体験をしてもらい、子供を笑わせることが得意な人は子供たちを笑わし楽しい思い出を与え、料理の得意な人はキャンプの料理の思い出を作り、私のようにどちらかと言うと子供相手が苦手でも、薪を燃やして湯を沸かし、ドラム缶風呂に入る体験をさせてやったり、学生たちは子供たちと一緒になって遊んでやりと、それぞれの持つ特技でもって子供に接しているのです。それは言い換えれば大人たちは自分たちの得意(経験)を子供たちに伝えている、もっと掘り下げればそれぞれが子供たちに生きる技を伝えているのだということに気が付いたのです。そしてそれこそが大人の役割の一つであることに気づいたのです。。

つまり(これはキャンプのときだけでなく日常においても言えることですが、)大人のすべき役割とは、子供たちへ生きる技を教えること。自分の持っている技を次の世代へ伝承させ、世代循環させていくということなのです。それによって子供たちは学び成長していくのです。

このことは当たり前と言えば当たり前のことなのでしょうが、しかしながら現在の家庭を見てみると、両親ともに朝から晩まで働きに出て、お金を稼ぐことに一生懸命になっているのではないでしょうか。子供たちは生まれて間もなく保育所通いとなり、その後は学校、部活、塾、習い事などで親も子供もお互い忙しくすれ違っているようです。たまの休みに外出し、アウトドア(BBQ)に出かけるとしても、最新の道具は便利で、手間いらずで、そこに大人の持つ技を教えているかというと、「?」としか言いようがありません。お金を通じてものを買い、そのものを通じての経験を与えはしても、そこには大人の「技」がないように思えるのです。

また今回のキャンプでは大勢の大人がそれぞれの得意を子供たちに伝えていたのですが、それは決して子供の両親だけでは伝えられないことばかりでした。もちろん学校の先生だけでも伝えられないことです。そこで思ったことは、子育てとは地域で行うものだということです。山の中のポツンと一軒家なら別でしょうが、町の中で子供がしっかりした大人へと育っていくには、両親や先生だけでは無理なのです。両親、先生、祖父母、そして地域の人々、それぞれが大なり小なりかかわりあう中で子供は育っていくのです。そうした関わり合いの中で「技」が伝わっていくのです。そこに地域の循環も生まれるのです。社会もつながっていくのです。

(私の)子供のころを思い出してみれば…、近所のおっちゃんが運転するトラクターに乗っけてもらったり、田んぼを荒らして(また別の)おっちゃんに怒られたり、近所のおばちゃんに声をかけたもらったり、やっぱり怒られたり…としたものです。地域のたくさんの人の顔が浮かんでくるのです。

けれどもこの地域も今や貧弱です。地域の人が子供たちを叱れば、その先何が起こるか分からない時代です。おのずと地域の人々もよその子にはかかわるのを遠慮する、見て見ぬふりをする時代です。そこには技の伝承も地域の循環もないのです。社会も分断されていくのです。それゆえ地域は(一つの)世代と共に終わりを迎えつつあります。その格好の例が都会の団地やニュータウンと呼ばれるところではないでしょうか。若い世代(子供たち)は大人になるとともにそこを去り、高齢者ばかりの地域となりいずれ廃墟となりそうです。しかしながらそれは今やニュータウンばかりではありません。核家族化が当たり前となった地方(都市)でもこれまでの地域とそのつながりが失われていっています。

地域内での技の伝承がなくなった現在、それをカバーしているのが今回のようなキャンプ企画であり、子供に関するNPOなのでしょう。それぞれの課題に特化し、(非営利で)活動し、解決しようとするNPOの存在は今や不可欠です。地域が崩れつつある現在、公的機関だけでは解決できない問題が山積みです。専門性あるNPOがそれを時に単独で、時に協働で支えているのが現状です。しかしながら最近の自然災害等を見ているとやはりそこには地域の力(つながり)が必要であり、取り戻さなければならないと思うのです。しかしながらその解決方法はまだ見出されていないのが現状です。

縦から横へ

さて話を変え、もう一つキャンプを通じて感じたことです。先に大人たちの「子供に経験をさせてやろう」という(暗黙の)共通目標が、年齢も、性格も超えて大人たちを結束させていたということを書きましたが、現代の社会においてこのことはとても大切ではないかと思うのです。

今の大人社会を見てください。いじめやハラスメントが横行しています。ハラスメント自体どうかなと思うところも多々ありますが、それを組織ぐるみで隠ぺいしようとするなどひどいあり様です。どれほどコンプライアンス(法令遵守)などと叫ぼうとも口先ばかりです。まあ社会のモラル自体が崩壊している現代社会ではどうしようにもないように思いますが…。その代表例が政府や国会ではないでしょうか。権力の乱用、嘘のつき放題、そしてそれに群がる企業群等…。まさに今だけ、金だけ、自分だけの亡者たちが集り、日々奪いあいと策略を繰り広げています。

もちろん正直に、真っ当に活動をしている組織もあります。けれどもそのような組織であっても多くが何らかの問題を抱えているように思えます。組織の中で鬱を患っている人も多くいるからです。

ではなぜそのような状況になっているかというと、いくら真っ当に活動している組織であっても旧態の組織構造のままでいるからです。つまり今でもピラミッド構造、縦型の組織であり続けているのです。言うまでもありませんが、政府、官僚、大企業… 縦型(ピラミッド型)そのものです…。

キャンプでは確かにリーダー(責任者)もいました。もちろんリーダーに指示を仰ぐこともあります。けれども基本的にはそれぞれがそれぞれの役割をこなしつつ連携が図られていました。なぜならそこには「子供たちに経験させてやろう」、「よい思い出を作ってもらおう」、「たくましく育ってもらいたい」という共通目標があったからです。みんながそこに向かって足並みをそろえていたのです。

リーダーはその共通目標の一番近くにいるとも言えます。なぜならリーダーは「今の子供たちは外でみんなと一緒に遊ぶことがない。外で遊ぶことが子供たちに必要である!」という想いでNPOを立ち上げ、このキャンプを長年続けてきたからです。スタッフはリーダーのその「想い」に共感し、それぞれがそれぞれのポジションにつきよりよいキャンプにしようと行動したのです。これこそが旧来の組織(縦型組織)との違いです。

この「想い」、そしてその共有こそが今後の組織の在り方といってもよいでしょう。「想い」とは、組織においてはVISION(ビジョン)や理念といってもよいでしょう。この理念やビジョンをみんなで共有する。少なくともそこで働く者たちが共有する。そしてそのVISIONの実現に向けてともに歩む(働く)ということこそがこれからの組織に必要なことだと思うのです。

もちろんその理念の共有の仕方も様々です。リーダーのすぐそばにいてビジョンを共有するものはガッチリした共有でしょうし、新人はそれに向かいつつも、まだ麓から頂上を眺めるようなものでしょう。また中には麓から時々眺める者もいれば、3合目付近で留まる者もいることでしょう。その際はよりビジョンの近くにいるものが声をかけたり、方向を示すことも必要でしょう。しかしそれは上司とか部下という縦の関係ではありません。理念に向けて、その理念にどれだけ近くにいるかという横の関係です。言い換えれば理念を中心とした円の関係と言ってもいいでしょう。この横の関係(円の関係)こそが今後の組織のあり方となってくると思うのです。

今回のキャンプはまさにこの関係で動いていたのです。それがうまくできたからこそ子供も大人もそれぞれが達成感を感じるキャンプになったのです。終わった時にはみんないい顔をしていたのです。

キャンプからの学び

まとめるならば今回のキャンプを通じて学んだことは
① 大人の役割の一つは、子供へ生きる「技」を伝えていくこと。それを循環させること。
② 子育ては地域で行うもの(→残念ながら、現在の地域は壊れているので、NPOや公的支援機関等に頼ることが必要です。頼ることを躊躇ってはいけません。)
③ これからの組織、チームのあり方は、理念(ビジョン)を中心とした横(円)の関係作りが必要であること

この3つのことを実感した実りの多いキャンプだったのです。スタッフとして参加したので多少の報酬もいただきましたが、それ以上のものを得たのです!まさにNPOのなせる伎、その価値プライスレス!です。

Image by Free-Photos from Pixabay

最後に余談(後日談)となりますが、キャンプ期間中(子供達が寝た後の)夜は飲んだくれ、昼は子供たちの世話をし、最終日は子供に付き合い走り回ったため、キャンプが終わった翌日は起き上がれない状態となり、更に数日後には熱を出すという事態となりました。子供達のエネルギーにはかないません…。「年齢と体力を考慮して行動しなければならない。」これもまたキャンプで学んだ教訓です。

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