まだ時期が少し早いですが、毎年年末になるとその年の流行語大賞が発表されます。昨年2018年の流行語を覚えていますか??? 昨年はカーリングチームの「そだね―」でした。既に忘れてしまっていた人も多いのではないでしょうか。
流行語とはそのようなものです。日本全国誰もが知っているようになっても、それはごく一時期のことであり、時が過ぎればほとんどの人が忘れてしまうという…。
それでは一昨年2017年の流行語が何であったか分かりますか? 1年も経っていないものも忘れてしまうのに2年も前のものなんて!と思われるかもしれませんが、実は「忖度」です。この言葉は現在も世間を賑わせて続けています。流行語となった年以上に現在使われている言葉となっているように思えます。
ただし本来「忖度」という言葉の意味は、「他人の心をおしはかること。また、おしはかって相手に配慮すること。」なのですが、あの森友事件以降忖度とは「権威や力のある相手へおべっかを使ったり、ひいきしたりすること」という意味のものとして使われています。
そしてこの言葉とセットになってよく出てくるのが「(国会)議員」、であったり「官僚」であったりします。まあ何ともいえないところです…。
その「議員」や「官僚」に忖度と同じぐらいくっついてでてくる言葉のひとつが「失言」であり、遂には「戦争」までもが飛び出してきました。きっと彼らの日常の中でそのようなことが何度も出てきているのでしょうね…。全く恐ろしい世界です。
話しが変わりますが、先日日本を代表する企業トヨタの社長が「終身雇用を守るのは難しい」と発言しました。年間の売上高が30兆円を超えているにも関わらず、終身雇用はもうやめると宣言したのです。
同じくそのトヨタを含め日本を代表する企業が集まる経団連の会長も「(従業員を)一生雇い続ける保証書を持っているわけではない。」と発言しています。もはや日本型経営は完全なる終わりを迎えたと言ってよいのでしょう。
このトヨタの社長発言の前に我が国の首相は米国トランプ大統領の下に何度目かの訪米をしています。その際の共同記者会見でトランプ大統領は「首相は日本企業が米国の自動車工場に400億ドル(約4兆円)の投資をする」と述べました。
トヨタはこれ以前にトランプ大統領が日本に対する貿易輸出の不均衡について不満を述べた際に、米国に700億円投資すると発言していますから、更に上乗せするのかもしれません。それでも400億ドルには到底及ばないでしょうから、日本の自動車関連産業全体が米国に投資することとなるのではないでしょうか?
(Hermann TraubによるPixabayからの画像)
トヨタは一企業ですからグローバル競争の中で生き残るためには現地生産率を高め、企業全体としての売り上げを伸ばしていくことはこの先の戦略として必要なことなのかもしれません。
けれどもそれはこの先市場の縮小しかないであろう日本においては投資の減少、各地にある工場の閉鎖となってくることも意味しています。同じくグローバルに展開している日本の大企業もそうなっていくのではないでしょうか。
もしかするといずれは各国に工場を配置し本社機能のみ日本にあるということにもなりかねません。すなわちこの先どれほどの大企業であれ、定年までそこで働き続けられるとは限らない、解雇もあり得るということです。
現在のところアメリカに対する処置ですが、この先世界中で保護貿易へと向かうことになるならばそのようになっていくのかもしれません。それらを加味して「終身雇用の終了宣言」を行ったのかもしれません。この会社に勤めれば一生安泰という「安心」はなくなったのです。
私はグローバルビジネスを推進しているわけではありません。かといって保護貿易に関心があるわけでもありません。私がここで言いたいのは日本の大企業といえども、この先生き残るためには、日本国民を守らないし、守れないということを言いたいのです。
かつて多くの国民は「国民総中流」意識を持ち、それは国のお陰、会社のお陰で、今の幸せがある、そしてこの先もそれが続くと思えていました。(今ではそのようなことを思っている人はいないでしょうが…、)もう全くもってそんなことはあり得ないのです。
そしてそれは企業だけでなく国(政府)もそうです。国内の実質賃金は低下し、格差は益々進むなか、米国へは400億ドル(4兆円)投資することを何の議論もなく決めてしまうのです。
子育て支援や、貧困対策の問題で議論すれども、そして安心できるよう、夢が持てるようしっかりとした対策をとると言いつつも、一体いかほどの予算が付けられたことでしょうか。1兆円なんて夢のまた夢のような額です。つまりもはや大企業も国も国民の生活を守ることはないのです。
そして私たちはもうひとつ気付かなければなりません。それは多くの議員が首相に忖度します。(しています。)同じく大企業や官僚も政府や首相に忖度します。(しています。)そうして自分たちの地位や権限を維持拡大し、利益に結び付けていきます。
ならば今回のアメリカのへの400億ドルもの投資は、明らかに国(首相)が米国に忖度した(している)と言えるのではないでしょうか?そして残念ながらそれは国民のためではなく、自己の保身のためです…。
ただしこれは現在の首相だけのことではありません。戦後歴代の首相はほぼみなそうでした。ただ現在の首相はこれまで以上に多くの金額を、あからさまなまでに行っているのです。そのお陰で米国への「忖度」の実態がより明らかに分かるようになったのです。
これまで多くの首相が「日米同盟の強化」ということを言ってきました。長期間首相をした人ほどそうではなかったでしょうか。現在の首相もことあるごとに「日米同盟の強化」言っています。そして私たち日本国民はある意味それを誇りのようにとらえていたところがあります。
けれどもそれは実は「アメリカへの忖度の強化」という意味だったのです。もっと露骨に言えば、日本はより一層アメリカの言いなりになります、いわば植民地として従いますというようなものだったのです。すなわち日米同盟の強化など誇りに思うようなものどころか日本を売るものでしかなかったのです。
勿論アメリカンドリーム全盛期の米国は本当に強く、懐深い国だったのかもしれません。けれども第2次世界大戦後、朝鮮戦争、ベトナム戦争と戦争の度に泥沼へと入り込み、疲弊していくと同時にそれまでの懐深さを失っていきます。そして日本の急速な進歩・発展により経済的にも負けが込み、日本への締め付けを強化していきます。それが80年代でした。現在はそれがまさに中国に対して行われていますし、おそらく日本にも400億ドルの鼻薬が切れたとたん更なる要求を押し付け、再度搾取しようとすることでしょう。
もうどこにもかつての強く、正義のアメリカなどないのです。ただこれまでの栄光と武力でもってその存在を誇示しているに過ぎないのです。
残念ながらそれに対して国も大企業も従うしかないのが現状です。それがこれまでの忖度慣例であり、植民地であるが故です。そしてそのことを大手メディアはこれもまた忖度し、部分的に切り取り、国民にはベールを着せその全貌を知らせぬようにしているのです。そしてお人好しな国民はマインドコントロールされ続けているのです。
さて、これら国を運営する者たち、日本を代表する企業の最近の一連のあり方見てみると、これまでの日本の基盤が壊れる寸前であるように思わざるを得ません。もし私たちが国や大企業に忖度して、その利益に今は預かれたとしても、いつそこから投げ出されるか分かりません。たとえもしそうならなかったとしてもそこに頼るのは滅びの道であり、いずれ一緒に崩壊するだけのように思えます。
株価をみて下さい。日銀が株価を上昇させるため、あるいは維持するために一体どれほど購入していることでしょう。多くの大企業が国営企業となってしまいそうです。統計をみて下さい。一体どれほど政府に都合のよいものに捻じ曲げてしまっていることでしょう。私たちはよい状況に向かっているとか、良い状況にあると思わされているだけなのです。なんだか太平洋戦争の末期に似ているように思えます。
しかしながら現在は嘘がどんどん暴かれて行く時代です。たとえ大手マスメディアがどれだけ忖度したとしても国の嘘、大企業の嘘は今以上にどこからともなく露わになって来ることでしょう。その時国民の多くが(初めて)真実を知ることとなり、国や政府に対する信頼は崩壊することとなるでしょう。もしかするとそれは日本だけでなく世界同時に、あるいは連鎖的に起こるかもしれません。
ではその時私たち自身はどうするのでしょうか?共倒れと共に失望し先の見えない世界をさ迷うこととなるのでしょうか?
それともいち早く国や大企業への依存体質から抜け出しておいて、混沌の中でも希望を持って進んで行くのでしょうか? かその差はとてつもなく大きいように思うのです。
令和の時代となりその日は近いように思えます。
(Greg WaskovichによるPixabayからの画像)